ここでいう子どもさんを「大事に育てる」ということは、日常生活の中で子どもさんがやるべきことをお母さんやお父さんが「先回りしてしてあげる」ことを意味しています。
例えば、着替えをさせてあげる、ご飯を食べさせてあげる、くつをはかせてあげる、2才・3才になっても外でベビーカーに乗せて移動する、子どもさんがおなかがすいているかなと感じたらすぐおやつを用意する、などが考えられます。これまでの療育教室 楽しい広場の相談でも、そういうお母さん、お父さんが多くいらっしゃいました。
さて、今回のテーマは、「言葉が遅い」です。もしこのように子どもさんにいろいろなことを先回りしてしてあげているとして、それがなぜ「言葉の遅れ」に影響をする可能性が高いのでしょうか。
理由は、そういう場合子どもさんは、お母さんやお父さんがいろいろ自分のことをしてくれるので、「しゃべる必要がない」からです。つまり、子どもさんが何かをお母さんやお父さんに「伝えようと思わない」ということですね。子どもさんは、言葉が出る前、「それが欲しい」「おなかがすいた」「おもちゃをとって」などの要求や考え、感情などを声や表情、動作、視線などの手段を使って大人と伝え合い、その延長上に「言葉で伝える」という「発語」ができてくると考えます。
お母さんやお父さんが先回りして大事に子育てをされているとしたとき、発語ができる前の段階、つまり言葉以外の手段を使って「大人と伝え合う」というところがぽっかり空いているのではないかと考えます。ですから、言葉特に発語が遅いと考えます。
もし、2才・3才で発語が遅い、言葉が遅いというお子さんがおられて、自分たちも「先回りして子育てをしているかもしれない」と感じられたお母さん、お父さんがおられましたら、原因は自閉症などの発達障害ではなく、生活経験の仕方であると考えられます。原因が分かれば、その経験の仕方を変えていくことによって遅れを改善していくことができます。
改善策は、次のようなことが考えられます。
自分でできることは自分でするようにさせましょう。それから、今まで多分子どもさんが「自分の思う通りにならない経験」というものをほとんどしていないのではないかと思います。これからは、日常の生活で当たり前のように出てくるであろうそういう場面で、「やだー」とごねるもよし、しぶしぶ待ったり我慢をしたりするのもよし、自分の考え、要求、感情を伝える場面をどんどん作っていきましょう。そういう経験が積み重なっていくことにより、相手に伝えたいという思いがどんどん増していき、その延長上に「発語」ができ、そしてそれがどんどんそれが増えてくると考えます。
今回は以上です。