子育て発達コラム 「かんしゃくを改善する」
- 崇弥 伊澤
- 2月24日
- 読了時間: 4分
我々、NPO法人 療育教室 楽しい広場のこれまでの発達相談の中でも、幼児期の子どもさんの「かんしゃくが激しい」というご相談が多くありました。かんしゃくと同じ原因なのが「靴履かせて」「服着せて」「抱っこして」などの「やって やって(依存)」です。このご相談も多くありました。
実はこの二つは「お母さんが変われば子どもさんも変わる」という典型的なものなのです。「かんしゃく」や「やって やって」は、その原因を考えていきますと共通点が見えてきます。それは、子どもさんが自分の思い通りにならない時、「待つ」ですとか「我慢する」など自分の気持ちを抑制する経験をしていないということです。
通常、子どもさんたちは赤ちゃんの時は「かわいい かわいい」とお母さんも子どもさんに合わせていきますが、ハイハイをし、立ち歩き出して行動範囲が広くなりますと、いつもいつも子どもさんに合わせているばかりにはなりませんので、「ちょっと待って「少し我慢してね」などということが日常生活の中で出てくるようになります。そういう経験を重ねていきますと、自然と子どもさんたちも「待つ」「我慢する」など、自分の気持ちを抑えて行動することを覚えていきます。
さて「かんしゃくが激しい」や「やって やって」の子どもさんたちはどうかと考えますと、通常、特別なことをしなくてもだいたい身に付いていく「待つ」や「我慢する」などの自分の気持ちを抑える経験をしていないのではないか、ということが考えられます。
ちなみに、これまでの療育教室 楽しい広場での発達相談の中で、主にお母さん方からお話を伺うと、お母さんのかかわり方の特徴が見えてきます。それは「子どもさんを大事に大事に育てる」「子どもさんを伸び伸び育てる」「子どもさんを自由に育てる」というものです。そしてこの三つには共通点があります。それは、お母さんが良かれと思いながらも「子どもさんのやりたいようにさせている」、言い換えると、子どもさんが自分の思い通りにならない時に「待つ」「我慢する」という自分の気持ちを抑える経験をしていないということです。
発達心理学的に考えますと、3才から4才頃から子どもは「自分の行動を自分でコントロールする力」である「自律性」というものが急速に発達していきます。「自律性」というのは言い換えますと、「場面や状況に応じて自分を主張したり、自分を抑制したりすることができる」ということです。そして、それは我々大人が一生を全うするまで必要なものです。
さて、それでは改善の方法についてです。「かんしゃく」も「やって やって」も、原因が「自分の思い通りにならないとき、自分を抑制する経験をしていない」だとしたら、そういう経験をさせていくことが必要になります。
例えば、お母さんが食事を作っていようが別の仕事をしていようが、子どもさんが「自分と遊んでほしい」といつまでも大声を出して騒いでいるとしたら、改善する場面はすぐやってきます。今まで、食事の支度があっても別の自分の仕事があっても、お母さんが無理をしてでも子どもさんに合わせていたのを止めてみてください。お子さんは当然騒ぎます。そのときお母さんは「平然」としていてください。もちろんお母さんの心の中では動揺しているかと思いますが、そこは顔には出さずにいてください。つまり、「平然を装う」ということです。無視ではありません。「あなたがいくら騒いでも、できないものはできないのよねえ」ということです。
この時、子どもさんのエネルギーがお母さんにどんどんぶつかってきますからお母さんもエネルギーが必要です」。ですからお母さんには「子どもさんとのバトル(闘い)です」というときがあります。それが無視と違うところです。お子さんはいくら泣いても騒いでもお母さんが平気な顔をしていますとだんだん疲れてきて、最後は諦めます。この「諦める」というのがポイントになります。
おそらく「かんしゃくが激しい」「やって やって」の子どもさんたちは、自分が騒げばお母さんは自分の思う通りになる、と考えていますから、毎日の生活の中で「諦める」という言葉は自分の辞書にはないのでしょう。今回の改善のポイントは、子どもさんの辞書の中に「諦める」という言葉を入れることです。一度「諦める」ということが身に付きますと、子どもさんたちはガラッと変わります。ここが大事なところです。
これまで、相談に来られた多くのお母さん方からお子さんが変わったというご報告をいただきました。「バトル(闘い)」で一番長かったのが2時間半、一番短かったのが3分でした。その「バトル」の後、子どもさんたちはガラッと変わったそうです。
お子さんの「かんしゃく」や「やって やって」にお悩みのお母さん、そしてお父さん、一度試してみてはいかがでしょうか。