子育て発達コラム 「おしゃべりなお母さんと口数の少ないお母さん」
- 崇弥 伊澤
- 1月20日
- 読了時間: 3分
「おしゃべりなお母さん」と「口数の少ないお母さん」というのはちょうど真逆なタイプで、多くのお母さん方はこの二つの間のどこかに位置するかと思います。さて、今回お話ししたいのは、この二つのお母さんのタイプのとき、子どもさんの言葉の発達が遅れる可能性が考えられる、ということです。
言葉の発達を考えるとき、重要なことが二つあると考えます。一つは言葉が出るまでにお母さんと「伝え合う経験」を数多くしているかどうか、ということです。言葉以前では、声や動作、表情、視線などの手段を使い、着替えや食事などの生活の中の各場面でのやり取りや、積み木や絵本の読み聞かせなどの遊びでのやり取りを通して、お母さんと子どもさんが気持ちや考えなどを伝え合っていきます。その伝え合いの経験の延長上に「発語」を契機とした言葉の発達があると考えます。
そしてもう一つ重要なのが「言葉を聞く」ということです。言葉というものをしゃべるには、お母さんがしゃべる多くの言葉を記憶しておかなければなりません。「言葉というものはこういうものだ」と実際に聞いて記憶して、それがお母さんとの伝え合いの中で言葉として再生されて出てくると考えます。聴力が弱い子どもさんの言葉の発達が遅れるというのは、「言葉を聞いていない」というところにあると考えられます。
言葉の発達に関する重要な二つのことを前提にして、二つのタイプのお母さんについて考えてみます。
まず後者の「口数の少ないお母さん」についてですが、口数は少なくても子どもさんと遊んだり、その他の場面でも言葉以外の手段を使って子どもさんとの伝え合いをたくさんしているとします。それでも言葉の発達、特に発語が遅れる可能性があります。それはなぜかと言いますと、お母さんが口数が少ないので子どもさんが聞いて記憶している言葉の数が少ないということですね。それが少なければなかなか言葉は出てきません。
もしこういう状況に近いなと思われるお母さんがおられましたら、子どもさんの言葉が出るまで、口数の多いお母さんを演じていただきたいとお願いしています。言葉がある程度出てくれば、時々口数の多いお母さんになっていただいて、伝え合いをして言葉の数、使い方、言い回しなどのボキャブラリーを増やしていただければと思います。その後、会話ができるようになれば、本来のお母さんに戻っていただければ良いと思います。
そして、もう一つのタイプの「おしゃべりなお母さん」についてです。この場合、子どもさんが聞いている言葉の数はとても多いと思います。つまり、子どもさんが記憶している言葉の数は多いということです。しかし、「伝え合う」という観点から考えたとき、おしゃべりなお母さんの場合、お母さんがしゃべった後、子どもさんが言葉以外の手段を使って伝えるという反応を待たず、次々と話をし出すという可能性が多く考えられるということです。つまり伝え合っているようで、実際は「お母さんの一方通行」の場合が考えられるということです。
そういう場合は、一言しゃべりたいのをぐっと我慢して、子どもさんの反応を待つということが大事かと思います。それによって「伝え合う」という経験が増していくものと考えます。