前回のブログ「なぜ、子どもはかわいいのでしょう?」の中で、親子の間に形成される愛着関係が、生得的に備わっているのではないか、というイギリスの児童精神科医ボウルビィの考え方を紹介しましたが、今回はそのボウルビィの考え方の妥当性を立証したと言われている、サルの乳児に関する実験を紹介いたします。
それは「ハーロウの一連の実験(Harlow,1958年)」と呼ばれるものです。
彼は生後間もないうちに母ザルから子ザルを引き離し、その子ザルをミルクを与えてくれる金網でできた代理母(模型)と、ミルクは与えてくれなくても暖かい毛布でできた代理母とがいる状況に置き、その様子を観察するという実験を行いました。結果は、ミルクを飲みに行くとき以外、子ザルは金網製の母親には近づかず、大半の時間を毛布製の母親にしがみついて過ごし、時にはそこを活動の拠点(安全基地)として様々な探索行動を行うというものでした。
つまり、子ザルには栄養を確実に与えてくれる存在よりも、接触による慰めや安心感を与えてくれる存在にくっついていることの方が「重要」だったと言えます。この実験について、サルと人間を一緒にすることはできない、とおっしゃる方もおられると思いますが、私としてはこの実験は母と子という親子の関係が人間にもある以上、重要な参考になると考えます。
そしてこの「接触による慰めや安心感」、言い換えると「ぬくもり」は、人間の子どもそして更には大人にとっても重要であり、なおかつ生涯大事にしなければならない、淡くそして貴重なものですね。「ぬくもり」をどうやって与え続けられるか、自分で感じ続けられるのか、これは発達心理学では答えは出ませんね。一人一人の生活の中にそれぞれの答えがあるのだと思うのですがいかがでしょう?
(参考文献)
無藤 隆、久保ゆかり、遠藤利彦 著:「発達心理学」、岩波書店、1995年