9才と言いますと、小学校3年生くらいになります。発達心理学を中心に教育の世界でも、昔から、昔と言っても私(伊澤)が聞いたのは今から30年くらい前ですが、少なくともそのくらいからは言われていたと思います。ただ実際はもっと前から知られていたと思います。
さて、「9才の壁」とはどういうことかですが、つまりは「発達の大きな節目の一つだ」ということでしょう。他の発達の大きな節目は「1才半」「3才」などがあります。ご存じの通り双方とも健診がある時期ですね。つまり、この時期に健診をするというのは、理由があるということです。
そして9才ですが、我々がいつも注目するのが、このころから「人を傷つける言葉を理解し始める」ということです。言い換えれば「人を傷つける言葉を使い始める」ということです。つまり「いじめ」が起こる可能性がこのあたりからある、ということです。
「人を傷つける言葉」を理解したり話したりするということは、それだけ繊細な言葉の使い方ができるようになるということだと思います。その繊細さのマイナス面が「いじめ」であり。プラスの面が相手に対する「気遣い」ができるようになる、というようなことなのかもしれません。
「同じ人間の口から出る言葉で、人を傷つけもするし、人を励ますこともできる」とよく言われます。言葉を使うときには繊細な配慮が必要ですよ、という戒めの言葉ですね。
親として、9才を過ぎる子どもさんがおられれば、人間であるから両方の言葉を使う可能性をもっていること、そしてその上で「相手のことを考えて言葉を使う」ことを、日々教えていくことが大事だと思います。